橋本さん:この法則を利用するケースは世の中に多くありまして、新型コロナウイルスの感染対策で厚生労働省が発表した資料には、「ビデオ通話でオンライン帰省しましょう」「飲み会はオンラインでしましょう」「会話はマスクをつけてしましょう」といった内容が書かれています。
オバ記者:帰省するな、飲み会するな、マスクを外して話すな、とは言わないわけね。
橋本さん:そうなんです。役人がこういったお達しを出すときは「○○してはいけません」「○○はやめましょう」というネガティブな表現が一般的ですが、国民もコロナ禍でストレスがたまって不安定になっているので、命令形ではなく肯定的な物言いをした方がいいんじゃないかって話になったようです。
オバ記者:ものは言いようね。
橋本さん:「ナッジ」という言葉もあります。これは英語で、肘で軽くつつくという意味です。行動をよりよく変えようとするとき、禁止や命令をするのではなく「こんなふうにしたらいいのかな」と相手に自発的に思わせて、行動を誘導する手法です。
オバ記者:ちょんちょんと肘で軽くつつくようなイメージね。
橋本さん:そうです。たとえば、男子トイレの床を汚さないために小便器の内側、下の方にハエの絵を1匹描いたところ、それが的になって狙いを定める人が増え、トイレの床を汚す人が減ったそうです。また、公衆トイレによくある「いつもきれいに使っていただきありがとうございます」というメッセージ。こう書かれると「汚さないようにしなきゃ」と思うでしょ。良心を軽く刺激しているんです。
オバ記者:あれはイヤミかと思っていたわ(笑い)。