人は意識しなくても多数派に従っている
オバ記者:先生、「保有効果」(経済学において、いったん自分が所有したものに価値を感じ手放したくなくなるという心理)ってモノだけに働くの?
橋本さん:いい質問ですね。実はモノだけではありません。技術など身につけたものにも働きます。たとえば、パチンコ台を見分ける能力はパチンコをやらない人にとっては意味がありませんが、パチンコ好きな人にとっては大切なものです。
オバ記者:(爆笑!)たしかに、パチンコで大当たりしたってことは自分の技術が認められた証拠ですもんね。
橋本さん:そうです。ギャンブルやソーシャルゲームには「同調効果」というものがあって、人は無意識に多数派に従う=同調するのがよいととらえる本能があるのです。ソーシャルゲームにはチーム戦もありまして、数人と組んでほかのチームと戦う場合がありますが、もし忙しいときにゲームに時間をとられたとしても、仲間がいると不安が減るんですよ。1時間没頭しても、まぁいいかと。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」の論理です。
オバ記者:なるほど、私が若いときにハマった麻雀は、4人そろってやるものだったしね。たしかに、4人そろえば“無敵”って気がしたもんね。……それにしても、行動経済学的に見ると、人の行動には一つひとつ理由があって、知らず知らずのうちに気持ちが流されていることもある、ってことがよくわかったわ。
私は、お金を貯めることの喜びより、気持ちよく有効に使うことの方が価値があると思っているから、これからもあまりお金は貯まらないかもしれないけど、でも、お金を使うときには少しでも冷静さを保つことを心がけたいと思います。先生、ありがとうございました。
(了。第1回 から読む)
【プロフィール】
橋本之克さん/マーケティング&ブランディングディレクター。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。近著に『9割の買い物は不要である』(秀和システム)。
オバ記者こと野原広子さん/空中ブランコや富士登山など体当たり取材でおなじみのライター・野原広子。女性セブン連載『いつも心にさざ波を!』も好評。64才。
取材・文/藤岡加奈子
※女性セブン2022年3月3日号