お盆やお彼岸は駐車場を探す車で大渋滞
選択の余地がなかったのはKさん(40代/女性)だ。Kさんは実家の真隣がお寺。リビングからお墓は見えないが、裏に回ると数百基の墓がズラッと並ぶ環境だったという。
「生まれた時から隣がお墓なので、怖いという感覚はありませんでした。小さい頃はお墓でかくれんぼや鬼ごっこをしたり、夏には肝試しやセミ取りをしたり、良い遊び場でしたね。大晦日には除夜の鐘をつかせてもらうのが我が家の恒例行事でした。
けれども成長するにつれて、色々とイヤなことも出てきました。小学校や中学校時代は、家がお墓の隣にあることを度々からかわれましたし、お墓には街灯がないため、帰りが遅くなると不気味で、遠回りをして帰っていました。
母親はよく、布団や洗濯物に線香の匂いがつくことにブツブツ文句を言っていました。あと、近所に風水に凝っているおばさんがいて、『運気が下がる』『方角が……』『霊が通る道だから……』などと、余計な世話を焼かれたこともありました。またお墓の近くは蚊、ナメクジ、でんでんむし、イモリ、ムカデ、蜘蛛などといった虫も出るので、虫嫌いの人も厳しいかもしれません」(Kさん)
熟考に熟考を重ね、墓地に隣接するマンションを購入したのは東京都豊島区に住むNさん(50代/男性)だ。
「どうしても都心に住みたかったのですが、予算の都合もあり、諦めかけていたところで見つかったのが、目の前が墓地のマンションでした。不動産屋に『(墓地なので)半永久的に高い建物は建ちませんよ』と口説かれましたが、最終的に決断したのは価格ですね。提示された価格は相場より1割近くも安く、住宅ローン価格が月々1万円以上安くなる魅力には抗えませんでした。
何となく友人が呼びにくいのは事実です。中には、『毎朝、カーテンを開けてお墓が見えたらテンションが下がる』などと言う人もいますしね。ただ、春にはお花見ができたり、夏には許可をもらって子供と花火をしたりと、楽しい面もあります。
ハッキリと言えるデメリットは、お盆やお彼岸に混み合うことです。駐車場を探してノロノロ運転する車で周囲は大渋滞ですし、路上駐車でトラブルになることもしばしば。マンションの駐車場に無断駐車する輩もいます。管理組合を通じて警察署に何度も申し入れをしていますが、こればっかりはもう諦めています」(Nさん)