同じホストを2年指名し続けていると話すユミ(仮名・25)は、毎月40万~60万円をホストにつぎこむ。
「私の担当(指名しているホストのこと)は売れっ子なぶん、抱えているお客さんの数も多くて。だから一人一人と恋愛ごっこをするんじゃなくて、一方的に応援されるアイドル営業って感じです。キッチリ金額によって対応を決めてサービスしてくれる」(ユミ)
ホストといえば「好きだよ」という甘い言葉で自分だけは特別だと思わせてくれることこそが醍醐味に思えるが、ユミは「好きって言ってこないところが推せる」という。
「相手が彼氏ならお金使いたくないです。だって私のこと好きならなんでこんなにお金使わないといけないの? 本当に私のこと好きなの?って病んじゃうじゃないですか。担当は私のことを絶対に好きにならないとわかっているから、変な嘘がなくて信じられるし、お金を貢げる。絶対崇拝のアイドルである推しが私とラインしてくれたり、直接話してくれるのって究極過ぎないですか? 私の前では私だけの推しなので。みんなに人気の推しと私、二人だけの思い出があるという事実が生きがいです」(同前)
従来のホストは疑似恋愛を楽しむ側面が強いが、偶像として一方的に応援できればいいというユミ。とはいえ、それだけカネを使っていれば見返りを求めてしまいそうだが。
「そりゃたまには付き合えたらなとか思いますよ。でもお金使って通い続けている限り終わらない片思いなんで。普通の恋愛とか今更できないです。好きな人に拒絶されるのが怖い。少なくともホストはお金を使っていればその分だけは接してくれるし、私のことを拒絶しないので。
多分、人とちゃんとコミュニケーションをとるのが怖いんですよ。最近私は風俗のお客さんかホストとしか過ごしてない。お金を挟まない人間関係をどう構築していけばいいのかわからなくなっちゃった」(同前)
(第3回につづく)
【プロフィール】
佐々木チワワ(ささき・ちわわ)/ライター。2000年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学在学中。15歳から歌舞伎町に通い、それをもとに「歌舞伎町の社会学」を研究する。著書に『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』(扶桑社)。
※週刊ポスト2022年3月11日号