寒さが徐々に和らぎを見せ始め、春が少しずつ近づいてきた。3月からは学校や職場などのさまざまな場面で、旅立ちに伴う別れや出会いのシーンが繰り広げられるはずだ。最近では小学校の卒業式に「袴」姿で参加する児童たちが増えているというが、家庭によっては金銭面の負担に頭を悩ませるケースもあるだろう。この春、愛娘が小学校卒業を迎えるという40代男性会社員に、フリーライターの吉田みく氏が話を聞いた。
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数年前から、小学校の卒業式の服装のトレンドに変化が起きている。これまで大学など大人の卒業式で一般的な「袴」姿での参加が増えているらしいのだ。特に女子児童からの支持が高く、学校によっては卒業生の半数以上が袴で出席するというケースも増えてきているという。一方、着付けや着こなしが大変であることや、金銭的な負担が大きいなどの理由から、学校として袴の着用を禁止するところもあるようだ。
妻と小学6年生の娘との3人暮らしという埼玉県在住の会社員ノブさん(仮名・46歳)は、卒業式で娘が着る袴について家族と意見が対立したという。
「仕事から帰ると、妻と娘がニコニコしながら袴のカタログを私に見せてきました。話によると、最近の卒業式では袴を着る子が増えているようです。娘も友人と袴を着る約束をしていると言っていました。華やかで素敵だとは思ったんですが、小学生には少し早い気がして賛同できなかったんです」(ノブさん、以下同)
ノブさんの反対理由は、ずばり金銭面だ。妻と娘の話によると、袴のレンタル費用で2万円、着付けとヘアメイクで5000円はかかるとのことだった。中学への進学準備にもお金がかかるため、「正直厳しい」と、ノブさんは話していた。他にも、小学校によっては袴着用が禁止されていることを知ったのも大きかったそうだ。
「妻と娘に袴を着ることに賛同できない旨を伝えると、妻からは『パパのお給料が高かったらよかったのに』と嫌味を言われ、娘からは『周りの友達は袴を着るのに……ひどい』と、泣かれてしまいました。正直辛かったですが、我が家には我が家の事情があります」