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黒田日銀vsメガバンクの対立激化で「預金者が切り捨てられる」未来へ

日銀が銀行にマイナス金利を適用するメカニズム

日銀が銀行にマイナス金利を適用するメカニズム

 前出の森岡氏が解説する。

「銀行にはコロナ給付金などで預金が集まっているが、不況下でこれ以上融資を増やすとなると焦げ付くリスクは小さくない。加えてウクライナ危機で債券市場も不安定です。銀行としては、高いリスクをとって融資や運用を増やすより、マイナス金利の罰金を払っても日銀に資金を置いていたほうがいいと判断したのでしょう」

 コトはそれだけにはとどまらない。三菱UFJが今回、日銀のマイナス金利適用というペナルティを受けた背景に、メガバンクと日銀の黒田東彦・総裁との対立があるという見方がある。大手銀行関係者の話だ。

「黒田総裁は就任以来、物価上昇2%の目標を掲げて“黒田バズーカ”と呼ばれる異次元の金融緩和とマイナス金利政策を続けてきた。金利で稼ぐ銀行にとっては厳しい政策です。それでも銀行側は要請に応じて融資を増やしてきたが、日銀の目標は達成できないまま銀行の経営は圧迫されていく。

 それなのに、黒田総裁は方針を変えないどころか、2月2日の衆院予算委員会で異次元緩和が地域金融機関の経営を圧迫しているとの野党の指摘に『認めません』と強い口調で反論した。その非を認めない態度に大手銀行の人間ならカチンと来て当然です。金融界では、今回三菱UFJが日銀のマイナス金利をあえて受け入れたことを、“日銀が何と言おうと、これ以上、融資先はないよ”という業界の思いを代弁するアピールになったと評価する声が多い」

 三菱UFJのマイナス金利受け入れが、金融界から黒田日銀に対する“無言の抗議”になったと受け止められているのだ。森岡氏が言う。

「黒田日銀はマイナス金利を深掘りしたい考えだが、収益が悪化している銀行はずっと抵抗してきました。黒田総裁の任期はあと1年ちょっととなり、デフレ脱却はいまだに実現されていない。それでも日銀は黒田総裁が続く間は掲げた看板を下ろしにくい。総裁の任期切れを前に、黒田日銀vsメガバンクの対立が強まってきたのは間違いない」

消費者団体が訴訟も

 だが、黒田日銀vsメガバンクの対立が激化するほど、日本の預金者への「マイナス金利」導入の可能性が高まっていく。

 中央銀行のマイナス金利政策による銀行の経営圧迫、コロナ対策の給付金による預金増大、ウクライナ危機による資金運用リスクの増大など、日本と欧州の状況はそっくりだ。そのうえ、黒田総裁がこのままマイナス金利政策を続ければ、銀行側はコスト負担に耐えられずに預金者に転嫁する動きを強めることが予想されるからだ。

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