前出・YさんはA学園を卒業後、一浪を経て難関私立大学に合格。はたから見れば順調な人生を歩んでいるようにも見えるが、「もし、もう一度選べるなら、小中高一貫校はイヤ」だという。
「中学や高校に入るタイミングで、一から友人関係を築かなくて良いのは確かに楽です。ただ、その一方で、いじめられたり、イジられ役になったりしたら悲惨。中学や高校に入るタイミングでリセットが出来ないんですから。小学校高学年にもなればある程度スクールカーストの上下が決まり、それが逆転することはまずありませんし、小学校の頃に変なアダ名を付けられると、一生そのアダ名で呼ばれます。子どもは時に残酷なアダ名を付けるので、そうなったら地獄です。
似たような家庭環境の子ばかりなので、在学中は居心地が良いですが、いざ社会に出ると、“世の中には色々な事情を抱えた子がいる“という当たり前のことが分からなくて苦労するのが“A学園あるある”。裕福な家の子が多いので、それがスタンダードだと思ってしまうのです。あと、これは私立によくあることですが、みんな家の場所がバラバラ。それが小さい頃からずっとなので、いわゆる“地元の友達”がいないのも少し寂しいですね」(Yさん)
中学から第2外国語。最大のネックは「学費」か
またYさんは、勉強についてこんな指摘をする。
「小学校に入れば基本的には高校まで上がれるので、あくせく勉強するのは大学受験だけ。小6で中学の授業内容に入り、高2ですべてのカリキュラムが終了して、高3は完全に受験対策になるため、学校の勉強をきちんとこなしていれば、自然に学力が上がっている印象です。中学から第2外国語をやっていたので、大学の第2外国語の授業も楽勝でした。
一方で、ほどほどにマジメにやっていれば高校まで行けるので、遊ぶ子はとことん遊んでしまい、クラス内の学力差は大きかったですね。それから、どの学年にも共通しているのは、下から上がる子ほど成績が悪いこと。成績は高校入学組が最も良く、次が中学入学組、その下が小学校入学組で、付属の幼稚園から来た子は本当にダメな子も多かった。エスカレーター式なので、入ると安心してしまうのでしょうか。
小学校受験の段階では、子どもの意志に関係なく親が学校を選ぶので、明らかに校風と合っていない子もいました。A学園は校則が厳しく、個性を伸ばすようなタイプの教育方針ではないので、合わない子はとことん合わないのです。しかし親は“せっかく一貫校に入れたのに”と、簡単には辞めさせてくれません。小中高の12年間、ずっと違和感を抱えた様子で過ごしていた子もいました」