実際にこうした治療法を取り入れている「三番町ごきげんクリニック」院長の澤登雅一さんはこう話す。
「私は長年、がんの標準治療を行ってきましたので、標準治療のよい部分は充分に理解しています。しかし、治療効果だけでなく、副作用や栄養管理など、不充分と感じる点もありました。そこで、標準治療と併用することで、より効果的に標準治療を受けられるようなサポートができればと考えるようになりました」(澤登さん・以下同)
免疫を上げることでほかの治療との相乗効果が期待できる可能性が高いため、標準治療と自由診療の併用が基本だと考えた方がいいという。
「がんと診断されたら、標準治療を受けることが大前提です。クリニックには、標準治療を受けたくないという理由で受診される人もいらっしゃいますが、効果を期待できる治療を受けられる患者さんには、標準治療を受けるよう交通整理をすることも私たちの仕事です。その上で、主治医の了解のもと、副作用対策や相乗効果を期待して、標準治療以外の治療を併用することをおすすめしています」
主治医の承諾を受けて、連絡を取りながら治療を進められるのがベストというわけだ。とはいえ、高額を支払ってがん免疫療法を行っても、効果の出方は患者によって違うという。
「私たち医師は、治療効果を出すべく最善を尽くしていますが、それでも効果が見込めないケースはあります。その場合、治療を行わない、あるいは、よいタイミングでほかの治療を選択することも必要です」
治療を変更する可能性も考え、1クール分の治療費をまとめて請求する病院ではなく、受けた治療に対してその都度、費用を支払うシステムの病院を選ぶのも、自由診療を行う病院選びの基準になる。
●ガンマ・デルタT細胞:抗がん剤との併用で効果に期待
ガンマ・デルタT細胞とは、がん細胞を直接攻撃する免疫細胞の1つで、患者から採取した血液中のガンマ・デルタT細胞を体外で増殖させてから、再び点滴注射で患者の体内に戻す治療法だ。
「ガンマ・デルタT細胞は、多彩な受容体(刺激を受け取り、それを情報として利用できる構造)を持っていて、がん細胞の表面に発現するさまざまな分子をいち早く認識して、樹状細胞などの指令なしにがん細胞を攻撃できるメリットがあります。しかも近年、その殺傷力が非常に強いこともわかってきています」
抗がん剤治療などと組み合わせて行うことで、がん細胞への殺傷力をより高められると期待されているという。
ただし、このガンマ・デルタT細胞はT細胞の中の数%でしかなく、培養が難しいというデメリットも。
●アルファ・ベータT細胞療法:体力を失っていても免疫細胞を増やせる
免疫細胞には、直接がんを攻撃するタイプとがん細胞を発見して攻撃するように指令を出すタイプがあり、前者がNK(ナチュラルキラー)細胞とT細胞だ。
このT細胞の一種がアルファ・ベータT細胞で、この細胞を増やすことで免疫力を強化するのが、「アルファ・ベータT細胞療法」だ。
治療は患者から血液を採取し、2~3週間かけて血液中のアルファ・ベータT細胞を培養して増やす。その後、数百倍から数千倍に増えたアルファ・ベータT細胞を生理食塩水とともに点滴で患者に戻す方法がとられるという。
「がんを発症している人の多くは、健康な人と比べて免疫細胞の数が減少傾向にあります。しかし、アルファ・ベータT細胞は、免疫細胞の中でも比較的増殖しやすいので、免疫機能が低下して、血液中のT細胞が少ない患者さんでも受けられる、というメリットがあります」
また、免疫力を総合的に高めるので、抗がん剤治療の副作用の軽減にもなるという。