●NK細胞療法:免疫のパトロールと攻撃力を強化する
血液中に10%ほどあるNK細胞は、強い殺傷力を持つ免疫細胞の1つ。NK細胞は常に体内をパトロールしていて、がん細胞やウイルスに感染した細胞など、異常な細胞を発見すると攻撃する。
「NK細胞療法」とは、患者の血液からNK細胞を採取し、増殖、強化した細胞を点滴注射で戻すというもの。
「がん細胞には、がんだけが出している目印(がん抗原)があり、がんを死滅させる力の強いキラーT細胞は、その目印を認識して攻撃を仕掛けるのですが、なかにはその目印を隠しているがん細胞もあります。そうすることでキラーT細胞の攻撃を逃れようとするわけです。
そこで、これをサポートするのがNK細胞です。NK細胞は、目印を隠したがん細胞も、速やかに認識して攻撃します。
キラーT細胞の司令塔として働く樹状細胞を増殖させる『樹状細胞ワクチン療法』(以下で詳述)と併用すると、より高い効果が期待できます」
●樹状細胞ワクチン療法:殺傷力の強いキラーT細胞を操る
樹状細胞にはがん細胞を殺す能力はないが、殺傷力の強いキラーT細胞にがんの目印(抗原)を伝えて、攻撃の指示を与える役割を担っている。
治療の流れは、患者の血液から樹状細胞のもととなる「単球」を取り出してがんの抗原を教え、どの抗原を攻撃すべきかを指示できる樹状細胞に育ててから患者の体に戻す。
「樹状細胞にがんの抗原を教えるには、手術で切除した患者さんのがん細胞のほか、人工抗原を用いる方法があります」
この「樹状細胞ワクチン療法」は近年進化しており、現在では、「ネオアンチゲン樹状細胞ワクチン療法」の研究が進められているという。
「これまでの人工抗原は、がん細胞に多く発現しているものの、正常細胞にも発現するものだったため、正常細胞にもダメージを与えるデメリットがありました。しかし、ネオアンチゲンは、がん細胞にしか発現しない抗原なので、正常細胞が攻撃されないで済みます」
●6種複合免疫療法(BASIC):6種の免疫細胞を一斉に強化する
「免疫細胞は互いに連携しながら働いているので、患者さんの免疫力を高めるには、キラーT細胞、NK細胞、ガンマ・デルタT細胞、樹状細胞、ヘルパーT細胞(免疫を活性化させる)、NKT細胞(免疫の活性化や調整を担う)の、6種の免疫細胞の働きを一斉に高める必要があります」
そこで開発されたのが、6種の免疫細胞を同時に培養、活性化させるこの療法だ。
「私たちの体は、もともと備わっている自然免疫と、病原体や毒素などの異物と接触することで後天的に獲得した獲得免疫に守られています。この免疫療法は、前者の自然免疫を強化します。
手術などでがん細胞を除去しても、小さながん細胞が残っている場合も。それが血液やリンパの流れにのって転移することもあるので、その予防に検討していただきたい治療法です」
がん細胞の増殖や薬の副作用で弱った免疫力の回復を目的としているため、標準治療を終えた後の選択肢となるだろう。