温熱療法:熱に弱いがん細胞の性質を利用した治療法
がん細胞は、42.5℃以上で死滅するとされ、温熱療法は、その性質を利用している。東京ユニリバースクリニック院長の西田陽司さんが解説する。
「正常細胞に熱を加えると、周辺の血管が拡張することで血流量が増えて放熱するのですが、がん組織の血管はほとんど拡張できず、そのため熱を逃すこともできず死滅してしまうのです。さらに体を温めると免疫細胞も活性化するので、がん細胞にとって居心地の悪い環境となります」
主な温熱療法には「ハイパーサーミア」があり、これは、手術や放射線療法などとの併用に有効性が実証され、1990年に電磁波による局所温熱療法として保険適用された。しかし、1時間も同じ姿勢を維持しなければならず、患者の身体的負担が大きいという。そこで以下の方法も紹介する。
●ラドン温熱療法:低線量の放射線による療法
「ラドン温熱療法」とは、低線量の放射線を体内に取り入れることで、さまざまな健康効果を引き出そうというもの。
「人工的な高線量の放射線は、体に悪く、逆にがんを引き起こしかねないともいわれていますが、自然の鉱石から発せられる低線量の放射線は、体にいいとされています」(西田さん・以下同)
治療法としては、自然の鉱石から発せられるラドン(低線量の放射性気体)の蒸気を体内に取り入れるのだという。
「具体的には、カプセルの中でミストを浴びます。この方法はラドン温泉と同じ原理。秋田や鳥取、山梨などのラドン温泉地域の住民は、がんによる死亡率が低いというデータもあるんです」
この療法には、鎮痛効果やデトックス効果もあるという。
「がん治療には体内にため込んだゴミを出すデトックスも必要。そのため私のクリニックでは、温熱療法と併せて、ケトン食(糖質制限食の一種)や解毒効果のある食材などを取り入れるための食事サポートも行っています」
●GKO温熱療法:特殊な周波数のマイクロ波を照射
「GKO温熱療法」は、上記「ラドン温熱療法」に、SHTと呼ばれる温熱機器を用いた療法を併せて行う。それぞれの治療時間は20分ほどだという。
「この療法には、がん抑制、免疫向上、鎮痛、デトックス、ホルモンバランスの調整などの効果が期待できます」
SHTは、患部に直接、マイクロ波を当てる機械だ。
「特殊な周波数のマイクロ波を患部に照射することにより、体内にあるがん病巣の温度をわずか数秒で42~44℃にまで上げられます。ただ、すべてのがんに効くというわけではなく、熱の届きにくい子宮や卵巣、また、腹水がたまっている患者さんの場合は、治療が困難となります」
1回の治療費は約1万~3万円。通常は1週間に2回ほどの治療から始め、病状によって少しずつ回数を減らしていくわけだが、開始から3~4か月後の確認が、効果を判断するひとつの目安になるという。
取材・文/上村久留美
※女性セブン2022年3月31日号