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卒業式“名物校長”の式辞「いま衣を脱ぐとき」「みんなはカオナシですか?」

2011年の東日本大震災の18日後、避難所の公民館で行われた大槌小学校(当時)卒業式の様子(写真/共同通信社)

2011年の東日本大震災の18日後、避難所の公民館で行われた大槌小学校(当時)卒業式の様子(写真/共同通信社)

いつもの会話の延長線上で話すのが理想

「校則をなくした中学校」として知られる、東京・桜丘中学校の前校長・西郷孝彦さんは、中学卒業生向けの式辞に特別な言葉は用意せず、ふだんからの声かけを大事にしているという。

「ふだんからアニメの話でよく生徒と話してきたので、式辞も子供ら一人ひとりを見ながら、いつもの会話の延長線上で話すのが私の理想です。卒業式の主役は子供たち。形はどうであれ、彼らにかかわった大人から感謝が伝えられればいいのです」(西郷さん)

 校長室を開け放し、ふだんから子供たちとオープンに話してきた西郷さん。自身の退任とも重なった2020年3月の最後の卒業式でも、“ジブリ”の話を引用し、次のような優しく深いはなむけの言葉を贈った。

「入学式で先生がした話、覚えているかな? 映画『千と千尋の神隠し』で千尋がカオナシと一緒に電車に乗る話です。途中の駅で千尋が大人になる瞬間があったよね。その瞬間が見たくて先生になったんだって。カオナシは顔がないから、笑ったり泣いたり、怒ったりできないんだよ。カオナシを見ていて、先生はかわいそうだなと思っちゃう。みんなはカオナシですか? 違うよね。笑いたいときは笑うし、泣きたいときは泣く。カオナシではありません。でも、もしかすると、ここに入学したときはカオナシだったかもしれない。きみたちにとって、まだよく知らない先生たちもカオナシに見えたかもしれない。ですが卒業する今日は、みんな自由に自分の思いや感情を顔や体全体に表せる人になったとうれしく思っています。今日でお別れですが、3年間、本当にありがとう。(中略)

 新型コロナウイルスがこうして流行り、いちばんつらいのは“会いたい人と会えないこと”だと思う。(中略)だから出会いを大切にしましょう。一生のうちで会える時間は、本当に短い。どんなに長くても100年はない。一緒にいられるのはせいぜい60年かな。今日あと少し、思い切り楽しんで、そして卒業してください」

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