技術の発展と原料の品質向上があって、米粉の需要は確実に伸びてきているのだ。農水省によれば、2022年度の米粉用コメの需要量は4.3万トンと過去最多を更新する見通しで、5年前の1.7倍に当たるという。
「国産小麦と米粉のロール」など米粉を生地材料の一部に使用した製品を展開している敷島製パン株式会社(ブランド名はパスコ)では、「米粉を使用することで独特のもっちりとした食感とほのかな甘みと風味が得られます」(広報室)と使用する理由を説明する。消費者にも好評のようで、「お客様からは『トーストするだけでものすごくもちもちしてて美味しい』といった感想をいただいています」(同)という。
ただネックは、値段の高さだ。2021年2月に農水省が発表している「麦をめぐる最近の動向」によれば、国内における小麦粉の生産は460万~470万トンで安定的に推移してきている。対して米粉は前述したように、増えているとはいえ4万トンほどでしかない。
生産量としては圧倒的に少ないわけで、それだけに流通における輸送コストがかかってしまうことになる。「そのため価格的に、米粉は小麦粉の2倍ほどになっています」と、前出の新潟製粉の藤井常務。
小麦粉と同等の値段となるのは簡単ではないだろうが、これから需要が増えていけば輸送コストが下がり、価格も下がっていく可能性はある。なにより、原料となるコメは日本国内にふんだんにあるのだから、足りなくなる不自由を心配する必要はない。輸入小麦の高騰は、米粉需要拡大の追い風となるかもしれない。
取材・文/前屋毅(ジャーナリスト)