2020年における中国の石油輸入額(UNCTADデータ、以下同様)は1763億ドルで世界最大である。米国は第2位ではあるが816億3000万ドルで中国の46%に過ぎない。以下、インド、韓国と続き、日本は第5位、中国の25%である。
一方、輸出をみるとトップはサウジアラビアで941億2000万ドルだ。第2位がロシアで832億ドル、第3位はアラブ首長国連邦で572億5100万ドル、第4位はアメリカで502億8600万ドルである。
米国企業はかつて中東の石油利権を保有、中東と親密な経済関係を築いてきたが、現在は様変わりしている。貿易構造をみる限り米国は、中東産油国にとって顧客というよりも競争相手に近い存在だ。
サウジアラビアの国営企業で世界最大の石油会社、サウジアラムコは3月10日、中国遼寧省盤綿市で大型投資を行うと発表した。同社は2019年2月、中国兵器工業集団傘下の北方華綿化工集団と合弁会社を設立。この合弁会社を通して総額100億ドルに及ぶ石油精製、化学工業製品を一貫生産する総合プラントを建設する計画である。2024年には営業を開始、サウジアラムコは新設備に対して1日当たり21万バレルの石油を提供する計画だ。
2018年10月に起きたサウジ記者殺害事件によって欧米とサウジアラビア皇室との間に大きな溝ができている。さらに欧米はクリーンエネルギーへの転換を急いでいる。
一方、中国は世界最大の製造業を有し石油製品需要が大きい上、政治的な干渉は一切行わない。サウジアラビア、サウジアラムコにとって中国は、戦略的に最重要国家となりつつある。実際、サウジアラムコは中国兵器工業集団のほか、中国石化と3社の合弁会社を設立しており、中国において積極的な事業展開を進めている。
足元で原油価格が急騰しているが、ロシアのウクライナ侵攻に対して欧米がロシアとの経済、金融取引を制限するといった厳しい制裁措置をとっていることが最大の要因である。
欧米諸国からの制裁によってロシア経済は逼迫している。仮に短期間でプーチン政権が倒れ、欧米従属の新政権が誕生するならば、原油価格は落ち着くだろう。