徳島県警を退職後は犯罪コメンテーターとして活躍する「リーゼント刑事」こと秋山博康氏の連載「刑事バカ一代」の特別編。秋山氏の新刊『リーゼント刑事』発売に合わせて、“サスペンスドラマの帝王”の異名を取り、数多の作品で刑事役を演じてきた俳優・船越英一郎氏との異色対談が実現した──。【全3回の第2回。第1回から読む】
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船越:現職時代、秋山さんを捜査に駆り立てた原動力は何でしたか。
秋山:やはり被害者です。ワシは10歳の時に空き巣被害に遭い、駆けつけた刑事に「オッチャンが絶対に犯人を捕まえるから安心せい」と言われたことが本当に嬉しくて刑事になろうと心に誓いました。刑事になってからは毎日のように被害者や遺族の悲しい顔を見て、「この人たちが一日も早く笑顔を取り戻せるよう、絶対に犯人を捕まえたる」との一心でしたね。
船越:職務中に危険な目に遭われたことも?
秋山:立てこもりの現場で犯人に刺されそうになったり、火災に巻き込まれたり、あわや殉職の場面は4回経験しました。
船越:4回ですか……。実は、ある警察OBも「同僚が目の前で殉職したり自分が大ケガを負ったらやはり怖い。それでも心が突き動かされる」と言うんです。実際に僕が演じてきたのも、秋山さんのように「被害者の代理人」として正義を遂行することに執念を燃やし、純粋に自己犠牲を払う刑事ばかりでした。
秋山:一方で捜査方法はかなり変わりました。昭和の刑事は取り調べや聞き込みなど対人関係の捜査が強かった。でも今は足ではなく、機械で捜査するのが当たり前になった。ある窃盗事件では、容疑者の似顔絵をもとにベテラン刑事が10日間聞き込みして何の情報も得られなかったのに、警察学校を出たての若い警察官がパパッとスマホでインスタを検索して、「秋山課長、コレ犯人ちゃいますか」と容疑者を見つけたことがありました。
船越:十津川警部にもITを使った捜査が出てきます。相棒の(角野卓造さん演じる)亀さん(亀井定雄刑事)は完全に昭和の人間でIT捜査を全否定するけど、ノンキャリの叩き上げである十津川警部は昔ながらの足の捜査を尊重しつつ、IT捜査を受け入れています。
秋山:昭和の時代は捜査員が24時間体制で現場を張り込み、若手が「防犯カメラを使ったらどうでしょう」と提案したら「バカモン! 刑事が機械を頼るとはどういうこっちゃ!」とごっつい叱られた。でも今は指紋や足跡だけでなくDNAで捜査が進展する時代です。証拠の取り方も以前とは大きく変わりました。
船越:犯罪そのものも様変わりしましたね。
秋山:殺人や強盗など凶悪事件が減ってネットを介した犯罪が激増しました。このため全国警察はIT企業に勤めていた人材を専門捜査員として積極的に採用し、サイバー犯罪捜査官を増員しています。ワシも警察人生の最後の2年間は徳島県警サイバー課の次長やったけど、部下が話す内容がチンプンカンプンで一言も分からんかった(苦笑)。