オバ記者:星占いもそう。私は牡羊座なんだけど、世の中に牡羊座の人は大勢いて、全員が同じ運命のはずがないとわかっていながら、でも熟読しちゃう。やっぱり牡羊座の占い結果はどこかで「私へのメッセージ」だと思ってんのよ。牡羊座って火の星座で特に情熱的といわれているけど、それを読むと「だよねぇ」って思っちゃう。
橋本さん:血液型もそうですよね。A型は真面目、B型は変わり者……といったステレオタイプがあって、人はそれに結構、影響されているんです。
オバ記者:スポットが当たった部分から人格が作り上げられるってこと?
橋本さん:そうですね。「ラベリング効果」といいますが……あるレッテルを貼られると、その通りの自分でいるべきだと思い込むようになる。もし血液型別の商品があれば多分、みんな反応すると思うんですね。レッテルに根拠がなくてもいいんです。山に1回登っただけなのに「山ガール」と呼ばれたら、調子に乗ってポンチョを買ったり……そういう心理を利用して売り込む手法もあります。
また、「参照点をずらす」という手法をCMやテレビ通販でよく目にします。エクササイズグッズのテレビ通販を見ていると、「これを使えば自分もこうなるんだろうな」と無意識に感情移入しているんです。画面に映る鍛えた状態のスリムなモデルの体が「参照点」になるんです(別掲図の解説参照)。
オバ記者:人が登場するのがポイントなの?
橋本さん:それだけではなく、「これを生活に取り入れたらどうなるか考えてみてください」といった文章でイメージさせる方法もあります。いまのままでは損をしている。だからこの商品が必要だ──CMはそう思わせるようにできているのです。
もちろんよい商品の場合が多く、あざといCMや商品ばかりではありませんが、購入申し込みをする前に自分の「参照点」を再確認してみたらいいでしょう。そうすれば、知らず知らずに出て行ってしまうお金を減らすことができるはずです。
(第4回につづく)
【プロフィール】
橋本之克さん/マーケティング&ブランディングディレクター。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。近著に『9割の買い物は不要である』(秀和システム)。
「オバ記者」こと野原広子さん/空中ブランコや富士登山など体当たり取材でおなじみのライター。女性セブン連載『いつも心にさざ波を!』も好評。64才。
取材・文/藤岡加奈子 撮影/浅野剛
※女性セブン2022年4月28日号