使っていないサブスクリプションの解約を忘れていたり、怪しげなオークションでエメラルドの偽物をつかまされたり、貯金がまったくできなかったり……お金にまつわる残念なエピソードが続く“オバ記者”こと女性セブンの名物ライター・野原広子さん(65才)。そんなオバ記者の行動にはどんな心理が働いているのか、行動経済学に詳しいマーケティング&ブランディングディレクターの橋本之克さんがひもとく。【全4回の第2回。第1回を読む】
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計画は楽観的になりがち。オバ記者がハマった落とし穴
オバ記者:実はいま、落ち込んでいるんです。私は東京・築地の場外市場によく行くんですけど、年初めにそこで「築地お年玉プレミアム買い物券」というのを買ったのよ。1万円で1万2000円分の買い物ができるという金券なんだけどね。そこで上限の5万円分を購入したんですよ。
橋本さん:おー、贅沢ですね。5万円で6万円分の買い物ができたんですね。
オバ記者:大間のまぐろを買いましたよ、気張って5万円分。で、あと1万円分が残ったわけ。何に使おうか悩んで、仲卸の知人から情報集めちゃったりして。もっといい話があるんじゃないかって粘ったわけよ。そしたら、使用期限が過ぎてたー!
橋本さん:たとえば今年8月まで使える金券があったとします。すると多くの人は、「こんなことができたらいいな」と最初は割と抽象的に使い道を思い浮かべるんですよ。でも、期限が迫ってくると現実的になってくる。「解釈レベル理論」というんですが……マリッジブルーという現象と同様で、間近になると憂鬱になってくる。時間でも物理的な距離でも“遠いもの”は理想的に考えちゃうんです。
オバ記者さんも、3か月先まで使える金券を入手した当初はあれこれ活用法を考えてワクワクしたと思いますが、使用期限が迫ってきたら現実的になって、考えるのが億劫になったのでは。
オバ記者:当たってる。買い物券を手に入れたときは「1万円得した」って有頂天だったけど、いついつまでに使わなくちゃと思うようになったら何だか面倒になって毎日毎日先延ばし。で、結局、1万円は使わずじまい。