ビジネス

ロシアへの経済制裁で進む世界の「ブロック化」 停戦後もインフレ続く見通し

たとえ停戦に至ってもインフレは止まらない?(トルコのイスタンブールで行われたロシアとウクライナの停戦協議。写真/AFP=時事)

たとえ停戦に至ってもインフレは止まらない?(トルコのイスタンブールで行われたロシアとウクライナの停戦協議。写真/AFP=時事)

 世界的なインフレ傾向が顕著になってきた。米国の消費者物価指数(CPI)は3月に前年同月比8.5%上昇し、約40年ぶりの水準に。日本の消費者物価指数はまだ大きくは上昇していないものの、企業間で取引される企業物価指数を見ると3月は前年同月比9.5%上昇した。これは第2次オイルショック以来、39年ぶりの高水準だ。

 コロナ禍の収束期待に伴う需要増に加え、ウクライナ侵攻による供給不安から世界的な物価上昇に拍車がかかり、原油などの資源価格が高騰。小麦をはじめとした穀物価格も上昇が止まらず、深刻な様相を呈している。第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミストの永濱利廣氏が語る。

「2007~2008年に小麦などの商品価格が大幅に上昇した際には、家計の『食料費』負担が年1万1000円(2人以上の世帯)も増えましたが、あの時以上の負担増となる可能性が高い」

 資源や食料の多くを輸入に頼らざるを得ない日本では急激な「円安」も追い討ちをかける。物価上昇に円安による輸入価格上昇が加わる“ダブルパンチ”によって値上げラッシュが起きている。

「1970年代のオイルショックの時は物価上昇率以上に給料が上がっていたが、今回はすぐに給料が上がるわけではない。企業は原材料の値上げを商品価格に転嫁できなければ利益が減って社員の給料は上げられない。一方で商品価格に転嫁すれば最終消費者が負担することになる。いずれにしろ、生活が苦しくなることが懸念されます」(永濱氏)

 しかも、この“値上げ地獄”は「戦争が停戦に至っても終わらない」と多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏は見る。

「このインフレは一過性のものではないと思います。これまで世界経済はグローバル化によって、世界中から安いモノを調達することでインフレになりにくい仕組みになっていました。しかし、ロシアへの経済制裁によって世界経済が分断される『ブロック化』が急速に進み、インフレが起きやすくなる構造へと一変した。ロシアが停戦に合意しても、当面は世界的な経済制裁や緊張は続くと考えられるため、物価上昇は続くでしょう」

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。