「働き続ければ増やせる」の罠
65歳以上の人口がピークを迎えるとされる20年後には、「定年制」自体がなくなる可能性も指摘されている。では、定年が70歳に延長された時に年金制度はどう変わるのか。まず確実視されているのが、支給開始年齢の「引き上げ」だという。
「定年から5歳遅れで支給する考え方を採る日本の年金制度では、70歳定年になれば、年金支給開始年齢が現在の原則65歳から原則75歳からに引き上げられることは十分あり得ます。この4月から(受給額が最大84%増となる)年金の繰り下げ受給の上限を75歳まで延ばせるようにしたのは、その布石と言えるかもしれません」(北村氏)
厚生年金の加入期間については、現在の「70歳まで」→「75歳まで」に延長される可能性がある。現在は会社員でも70歳を超えれば保険料を払わずに済む。政府の建前は、年金加入期間が延びることで、70歳以降も年金額を増やせるということなのだろうが……。
「厚生年金に75歳まで加入するということは、その間も保険料を吸い上げられるということです。新たに支払う70歳からの年金保険料の分だけ受給額が増えるといっても、最低でも90歳くらいまで生きないと“払い損”になる可能性がある。たとえ長生きして“元を取れた”としても、高齢になるまで働くのが幸せかどうかは難しい」(北村氏)
また「厚生年金の適用拡大」に伴って会社員の夫の扶養に入ることで保険料を払わずに国民年金の加入期間としてカウントされる専業主婦の「第3号被保険者」の廃止も懸念されている。