それは現実になりつつある
熟年離婚以外にも、家族関係では大小様々な問題が懸念される。家族・親類縁者が揃って長生きすれば、そのうちの誰かが老後破産の危機を迎えたり、寝たきりになったりして、支援しなくてはならない可能性が考えられるだろう。
もちろん、自分が支援を必要とする立場になることも考えられるが、その時には助けてくれるはずの子供はもちろん、孫まで年老いているかもしれない。悪夢の「老老老介護」時代である。介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子氏は「それは現実になりつつある」と指摘する。
「親が100歳、子が70歳、孫が40歳くらいで、親の介護をしている70歳の“子”が倒れて、孫が親と祖父母の介護をせざるを得なくなるケースがすでに起きています。『親の介護は子供がするもの』という空気が、『祖父母と両親は孫が介護するもの』となっていく恐れがある。肉体的、経済的な負担が孫世代にまでのしかかったうえに、孫世代も“若者”とは言えない年齢になっていく。最終的に家族全員が共倒れになることも十分考えられます」(太田氏)
めでたいはずの長生きが、家族を崩壊させかねない──人生120年時代とは、本当に幸せなのだろうか。
※週刊ポスト2022年4月29日号