「深刻なコンテナ不足による一時販売休止について」──。駅弁会社とは思えない知らせが今年3月上旬、淡路屋(神戸市)の公式サイトにアップされた。2か月前の元日に発売した新作駅弁「JR貨物コンテナ弁当」が想定外の反響を呼び、大ヒット。コンテナ型容器の確保が追いつかなくなったため、一時出荷を休止したという事情だった。
その後、販売再開した4月上旬、同社を訪れると長蛇のコンテナ容器が製造ラインを流れていた。
JR貨物のコンテナをモチーフにした弁当箱は、実際のコンテナと同じように積み重ねられる設計にするなど細部にまでこだわっている。ベルトコンベア上をコンテナの弁当箱が流れていく様子は、貨物列車が走行する光景を彷彿とさせる。甘辛い風味のすき焼きの具をスタッフが順番に盛り付けていく。
明治36(1903)年創業の淡路屋は、日本初の加熱式弁当、日本初のワインボトル入り弁当などエポックメイキングな駅弁を開発、世に送り出してきた。老舗だが、新しいことに挑戦する社風で、ロングセラー駅弁「ひっぱりだこ飯」も海上保安庁とのコラボ版などを次々と投入している。
しかし、コロナ禍前は通常1日1万食だった生産数が一時1日300食まで激減する危機にも陥った。柳本雄基副社長が振り返る。
「飛沫防止シールドを装備した駅弁を発売したり、思いついたことをどんどんやりました。コロナ禍が始まる頃、JR住吉駅のホームで貨物列車を見かけて思いついたのがこのコンテナ弁当です。今後も面白い駅弁を考え、駅弁業界を明るくする話題を提供したいです」
※週刊ポスト2022年5月6・13日号