“得する新ルール”でむしろ失敗しかねない
ただ、北村氏は「70歳、75歳までの繰り下げが得かというと、それも簡単ではない」と指摘する。
「生涯受給総額で考えると、繰り下げで得になるには長生きしないといけない。75歳まで繰り下げると、65歳受給開始の場合の年金総額を上回るには86歳まで生きる必要があります。現状では男性の平均寿命が81.6歳であり、増額されるからといっていきなり70歳や75歳への繰り下げを考える必要はないと思います」
“得する新ルール”だと思って飛びつくと、むしろ失敗しかねないという指摘である。
とはいえ、寿命がどんどん長くなっているから年金は多いほうがいい。そこで北村氏が推奨するのは「まずは1年繰り下げて66歳受給開始を考えること」だという。
「制度上、繰り下げを選んだら最低1年は受給開始を遅らせる必要がある。なので、まずは66歳受給開始にして8.4%の増額を目指すのです。超低金利時代に1年で8.4%増やす運用は至難の業。老後資金を確実に増やせる方法として有力でしょう。66歳以降は1か月刻みで受給開始時期を選べるので、その時点でまだ余裕があれば繰り下げを続ければいい」
※週刊ポスト2022年5月6・13日号