中国では「ゼロコロナ政策」の徹底で、一部の都市の都市封鎖が続いており、消費が低迷している。また、米中デカップリングの進行で、中国企業も大きなダメージを負っているようにみえる。そうした中で、華為技術(ファーウェイ)は、経営戦略を駆使してさらなる成長を遂げようとしている。
米国商務省産業安全保障局は2019年5月、華為技術をエンティティ・リスト(禁輸対象企業リスト)に掲載し、同社に対する米国製品の輸出を事実上禁止した。2020年5月には規制を強化。同社グループで設計し、台湾のTSMCで委託製造していた半導体について、TSMC側が受託できないような規制をかけた。さらに2020年8月には同社とその関連企業に対して、米国製の技術・ソフトウエアのアクセス制限を強化する措置を加えている。
この度重なる制裁によって華為技術は主力の一つであるスマホ事業において壊滅的なダメージを被った。それに前年から続くコロナ禍の影響が加わり、前期の事業環境は最悪であった。にもかかわらず、華為技術は大幅増益を達成している。
2021年12月期の売上高は6368億元(12兆4813億円、1元=19.6円で計算、以下同様)で28.6%減収だが、純利益は1137億元(2兆2285億円)で75.9%増益となった。
それまで部門別売上で過半を占めていた主力の消費者向け業務だが、スマホ事業の大幅な縮小によって49.6%減収となった。加えて、国内の5G投資が一段落したことで通信キャリア向け業務売上も前年割れとなった。
全体的に事業規模が縮小する中で、政府や、交通、金融、エネルギー、製造業関連企業向けにデジタル化のためのソリューションを提供するなど、利益率の高い企業向け業務を伸ばしたり、全体としては厳しい消費者向け業務だがウェアラブル、タブレット、ワイヤレスイヤホン、クラウド事業などを伸ばしたりしたことで、増益を確保した。
営業活動キャッシュフローは597億元(1兆1701億円)で、前年よりも245億元(4802億円)増えており、増益の質も高い。収益構造を柔軟に変化させることで、米国の制裁によるダメージを吸収している。