近年、故人のパソコンやスマホから発覚した「死後の秘密」を巡るトラブルが増えているという。なかでも、金銭の絡んだ秘密は、遺された家族をやっかいな問題へと引き込みやすい。故人の死後、家族に内緒でやっていた株やFX(外国為替証拠金取引)の取引が発覚し、知らぬ間に負債が膨らんでいたケースもある。
「もう、株はやめると約束していたのに……裏切られた気持ちでいっぱいです」
4年前に脳梗塞で夫を亡くした水上藍子さん(仮名・77才)は肩を落とす。
「将棋が趣味で、交友関係が広い夫でした。葬儀に来てくれた友人たちが『亡くなる直前の飲み会で一緒に写真を撮った』と教えてくれたので、見たくなって初めて夫のスマホを開きました。しかし、ロックを解除して最初に目に入ったのは、株やFX関連のアプリでした」(水上さん・以下同)
嫌な予感がした水上さんは、写真を見るのも忘れて、すぐにアプリにログインし、取引口座を調べた。
「実は夫は、結婚直後に株に手を出して大損したことがあり、『もう二度と手を出さない』と言っていたんです。結局、夫が所有していた株は、私が相続して売却しました。損失は20万円ほど。このくらいですんでよかったと思うしかありません。
金額よりも、何十年も約束を守ってくれていると思っていたのに、黙って株を買っていたことがショックでした。時々すごく高級なお肉を買ってきてくれたり、営業でトップだったから成功報酬が出たと言って、アクセサリーを買ってくれたりしたことがあったのですが、株でもうけたお金だったのかもしれないと思うと、幸せな記憶まで汚れてしまった気がして悲しくて」