経済ジャーナリストの大西康之氏は、現在のソフトバンクGは「“普通の会社”ではない」と語る。
「ここ数年の業績の乱高下は、ちょっと異様です。日本の旧来的な製造業の企業ではまずあり得ない。世間一般のイメージからすると“携帯会社”という認識かもしれませんが、いまは完全に“投資会社”です。今回の大赤字も世界の株価急落を受けて、資産が急激に目減りしたということ。
簡単に言ってしまえばマーケットの浮き沈みに合わせて業績が動いているに過ぎないのですが、それが1兆円単位となると話は別です。普通の会社だったら資産が1年間で何兆円もすっ飛んだらやっていけるはずがない」
ソフトバンクGが急速に投資会社へと姿を変えた背景には、孫氏の“立ち位置”の変化がある。
これまではADSLの普及や「iPhone」の販売など常に日本のIT業界をリードしてきた「起業家」だったが、近年は巨大ファンドを運営する「資本家」へと変貌を遂げた。その証拠に、孫氏は2020年2月に開かれた決算報告会で自身を「冒険投資家と呼んでください」と語っている。
「孫さんは『(利益)100兆円を目指す』と言って、世界各国の有望なスタートアップ企業に片っ端から投資しています。今年で65歳になり、経営者としてビジネスの最前線であと何年やれるか分からない。自分が1つ1つの事業をやっていても限界があるため、投資という道に進んだのでしょう」(大西氏)
※週刊ポスト2022年6月3日号