ソフトバンクグループ(以下、ソフトバンクG)の2022年3月期連結決算(国際会計基準)は、純損益が1兆7080億円の赤字。原因は、2017年に「10兆円ファンド」として鳴り物入りで立ち上げた投資事業「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」にある。ソフトバンクGの投資先企業の株価が急落したことで巨額の損失を計上。昨年の決算発表時は26.1兆円あった時価純資産(※)は、18.5兆円となり、たった1年間で約7兆6000億円も減少してしまった。
【※投資会社や投資ファンドが企業の価値や業績を評価する際の指標で、時価で計算した資産総額から負債を差し引いた金額のこと】
2020年2月の決算報告会では、自らを「冒険投資家と呼んでください」と語ったこともある孫正義社長(64)。その“冒険”を左右する「投資先」にはどんな企業があるのか。グローバルリンクアドバイザーズ代表の戸松信博氏が言う。
「SVFの全体的な投資先の傾向としては、滴滴や米国のウーバーなど『配車サービス』のウェートが大きい印象です。また孫さんは自身が感動できるかなど『直感に頼る』ことが多く、現時点での企業規模や成功よりも将来の“AI革命”に繋がるかを大事にしているようです。
孫さんの企業を見る目はたしかで魅力的な投資先が多いと思います。ただ、未上場の企業も多いため投資環境に影響されやすい。今後どう転ぶかはまだ分かりません」
SVFの投資先は延べ300社以上に及ぶ。投資額の多い上場企業の一部をこの1年間の評価額の推移とともに別表にまとめた。大幅に値を下げた企業が多かったが、共通するのがどの企業も独自のアイデアを持つIT企業ということだ。
表に掲載した投資先以外でも、スウェーデンのクラーナは後払い決済の企業で、無利子で分割払いや30日後の後払いが可能になるサービスでデビット・クレジットを代替する新たな決済方法として注目を集めている。ノルウェーのオートストアはロボットによる倉庫の自動化を進める企業。人の動線を考慮する必要がないため、省スペースでの高密度保管を実現した。