円安が進行している。4月20日の東京外国為替市場は一時、1ドル=129円台を記録、約20年ぶりの安値を付けた。その後は一旦、落ち着きを取り戻したものの、127~128円台で推移している。かつて円安は輸出企業にとってメリットが大きいと言われていたが、海外からの輸入製品の価格上昇を通じて、我々庶民の生活を直撃している面もある。
少し長い時間軸で考えると、米国の対中強硬策により、グローバルなサプライチェーンの構築が進まなくなり、構造的に価格を押し下げる力が弱くなっている。短期的にはロシアのウクライナ侵攻により、エネルギー、穀物などの供給力が弱まることで、こうした製品の価格が上昇している。これらの要因に円安が加わったことで、日本でも輸入インフレが国内の消費者物価を大きく押し上げるリスクが高まっている。
国内のインフレが発生した場合、それを防ぐ方法はあるだろうか。
米国が現在行おうとしているように、金融を引き締め、総需要を調整すればよい。しかし、日本の場合、金融財政構造を考えるとそれは難しい。
IMFの発表した最新のデータによれば、2021年における日本の政府総債務残高対GDP比は263%でベネズエラに続き第2位であった。3位のギリシャ、4位のスーダンよりも高い。また政府純債務残高対GDPは169%で、こちらは世界第1位であった。
直近2年はコロナ禍の影響があり、債務状況はさらに厳しくなっている。対GDPデータをみると、2年前と比べ、総債務残高は27ポイント、純債務残高は17ポイントそれぞれ悪化している。
金利を引き上げれば当然、政府の利払い負担は増加する。支出を削れないとすれば、利払いが増えた見合い分を、どこかから調達しなければならない。それを国債の増発に頼り問題を先送りすれば、いずれ財政破綻を起こしかねない。
米国も日本ほどではないが、財政赤字は深刻だ。これ以上不健全な財政構造を放置できないと判断したからこそ、インフレ対策で金融を引き締めなければならない中で、QE(量的緩和)を終えQT(量的引き締め)を始めようと考えているのではなかろうか。