真壁昭夫 行動経済学で読み解く金融市場の今

米国で最も裕福な一族も日本株を大量購入 なぜいま「日本株買い」なのか?

富豪一族として知られる米ウォルマートの創業一家、ウォルトン家のメンバー。左からロブ、アリス、ジム(写真/Getty Images)

富豪一族として知られる米ウォルマートの創業一家、ウォルトン家のメンバー。左からロブ、アリス、ジム(写真/Getty Images)

日本株こそ割安な「バリュー株」

 さらに言えば、世界のお金持ちがどんな行動に出ているか。そこから学ぶこともできる。

 米ウォルマートを創業したウォルトン家のファミリーファンド(投資会社)は、ここにきて日本株のETF「iシェアーズMSCIジャパンETF」を2億3930万ドル(約306億円)購入していたことが明らかになっている。米国で最も裕福な一族がいま日本株を大量に購入しているのだ。

 足元では、米国の利上げで米グーグルやアップルなどのGAFAをはじめとする「グロース株(成長株)」が売られ、「バリュー株(割安株)」への見直しが始まっているが、世界の投資家の間では“日本株こそ割安なバリュー株”と見られており、ウォルトン家の日本株買いも、まさにそのひとつと言えるのではないか。

 市場関係者の間では、これまでのバブル相場を牽引してきたグロース株にまだまだ妙味があるといった見方も根強い。行動経済学では、そうした枠組み(フレーム)にとらわれて意思決定することを「フレーミング効果」という。だが、目端の利く富裕層はその裏をかいて日本株買いに走っているのだ。

 実際、日米の株価の年初からの値動きを見ても、日本株の下落幅は米国株よりも小さく、日本株を見直す動きが垣間見える。「給料が増えないのに値上げばかり」と嘆く前に、お金持ちの行動パターンに倣う手もある。資産を防衛する手段は、この国にも残されているのではないだろうか。

【プロフィール】
真壁昭夫(まかべ・あきお)/1953年神奈川県生まれ。多摩大学特別招聘教授。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリルリンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学教授、法政大学大学院教授などを経て、2022年4月から現職。「行動経済学会」創設メンバー。脳科学者・中野信子氏との共著『脳のアクセルとブレーキの取扱説明書 脳科学と行動経済学が導く「上品」な成功戦略』など著書多数。近著に『ゲームチェンジ日本』(MdN新書)。

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