若年層の約半数が「ほぼテレビ放送を見ない」
こうしたAさんの発言を受けて、私立大学教員で情報学の授業を担当する女性・Bさん(30代)は、「子どもたちの発言は、たしかに国民のテレビ視聴の現状に当てはまる」と指摘する。
「NHK放送文化研究所が発表した『2020年 国民生活時間調査』の結果によると、日常的にテレビ放送を見る人の割合が国民全体で減少傾向にあることがわかっています。5年前(2015年)の調査では85%でしたが、2020年は79%となり、6ポイント減少しています。なかでも16歳から19歳までは47%、20代は51%と、若年層の約半数が『ほぼテレビ放送を見ない』という現状が明らかになりました。
また国民全体のメディア利用時間を見ると、テレビが3時間1分と最も長いのですが、若年層ほどテレビ放送の視聴時間が短く、インターネットの利用時間が長くなる傾向にあります。とくに20代以下では、1日にテレビを視聴する時間よりもインターネットを利用する時間の方が多いことがわかっています」(Bさん)
こうした傾向をさらに加速させているのが、テレビならびにリモコンの進化だ。Bさんが続ける。
「最近ではテレビリモコンに『ネット動画再生用』のボタンが付いているものも増えました。たとえば、ABEMA、Netflix、Hulu、U-NEXT、YouTube、Amazon Prime Videoなどのボタンが据え付けられていて、かつてのリモコンの機能と比べると隔世の感があります。
そのため、リビングのテレビでも簡単にインターネット動画を見ることができるようになりました。学生に話を聞くと、ゲーム実況やアイドルのMVなどを、スマホよりも大きな画面で見たいという声が多い。若者にとってテレビは地上波の番組を見るためのものではなく、ネット動画を見るための再生装置のひとつとして認識されているのでしょう」(Bさん)
さまざまなスタイルで動画視聴が可能になった現在、若者にとっての「テレビを見る」という言葉の意味合いは、かつてのそれとは大きく変化しているようだ。