「いやいやいや、私、他人の見ちゃいけない情報、見ちゃってるし、送り返して済む問題? 私の督促状が彼の封書に入っているかもしれないじゃない」と言うと、「それはないと思います、はい。そんなことはありません」。
「ふーん、じゃあ、聞くけど、いま私が手にしている書類を区役所に返送するときの切手代は私が払うわけ? なんで?」
すると、「あ、そうですね。上と相談しますんでちょっと待ってください」。この待たされている間に、私は頭に血が上って、心の中が黒ずんできたんだわ。
「もう切手代はいいです。お手間でしょうから、家も近いことだし、私がこの男性に直接届けますよ」
それで担任者くん、初めて事の重大さに気づいたんだね。「ええ~、それは困りますよ。それだけはやめてください。騒ぎが大きくなっちゃうじゃないですか」だって。
昔のことで子細は覚えていないけれど、何度かのやりとりの後、担任者くんが放ったひと言が、さらに私を激怒させたんだわ。
役所側の口の利き方って、実はめちゃくちゃ大事
「課長がお詫びに伺うと言ってます」
役所の中で課長がどれだけエライか知らないけれど、私とは関係ないよ。担当者くんの言い分は頭から尻尾まで自己都合、てか、役所都合。
「わけわからないわ」と言うと、今度は「じゃあ、どうすればいいんですか!」ときた。これが決定打。
で、どうしたかというと、握りつぶし。個人的に忙しかったこともあって、役所からの電話はオールスルー、郵便受けに入っていた切手なしの封筒はポイ捨てし続けたの。
担当者くんは私がいつ督促状の主のところに行くか、もしかしたらすでに行ったか、気が気じゃなかったんじゃないか。私もそのうちその区から引っ越しちゃった。
それにしても、話が通じない相手との平行線って、意地悪が通じないほど果てしないんだね。しばらくしてからこの経緯を、2年で役所を辞めた男友達に話したら、「ふんっ。そいつ、配置転換したら帳消し。全部忘れちまうよ」と鼻で笑われたわよ。