しかし、防犯カメラに限らず、社会生活ではある程度の干渉は避けられません。写真撮影が違法と判断される条件として、撮影の場所、撮影の範囲、撮影の態様、撮影の目的、撮影の必要性、撮影された画像の管理方法等のさまざまな事情を総合的に考えて、撮影された人が感じる不快感や不安が、撮影の必要性やその利益を上回り、社会生活上受忍の限度を超えることが必要です。
防犯目的のカメラ設置自体は不合理ではありませんし、近隣の治安状況によっては必要な場合もあります。また、そもそもの設置目的は、自宅前の交通記録を残すためであり、あなたの家を見張ることが目的ではない、と思います。
現在の防犯カメラの設置位置や撮影方向が防犯の観点から合理的なものであれば、道路を隔てた家の開口部の方を向いているからといって、それだけで肖像権やプライバシー侵害になるとは言えません。何らかの行為を要求することは難しいとは思います。
しかし、それは向かいの家の防犯の必要上、設置するカメラをあなたの家の開口部方向に向けざるを得ないということを前提としています。もし、カメラの設置位置や撮影方向を変更しても防犯の目的に支障がない場合には、現状の設置を継続することに問題があると思います。
防犯カメラの設置位置あるいは撮影方向を変えたり、撮影距離を調整したりしても、防犯の目的に変わりがないと思われる場合には、現状で感じている不安を向かいの家に説明して、変更を検討するように求めるのがよいと思います。まずはよく話し合ってみましょう。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座、B型。
※女性セブン2022年6月16日号