徳島県警を退職後は犯罪コメンテーターとして活躍する「リーゼント刑事」こと秋山博康氏の連載「刑事バカ一代」。今回は女性の大敵「下着泥棒」との闘いについて綴る。
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おはようさん、リーゼント刑事こと秋山博康です。
11月末、米国の動画販売サイトでわいせつ動画を販売し、巨額の利益を得ていた連中が一斉に摘発された。その中には、東大卒の研究者や国家公務員も含まれていたというから世も末や。
ワシも刑事の頃、裏ビデオ業者を摘発したことがある。まだビデオテープが使われていた時代で「何時何分に女性の陰部が露呈した」といった証拠を固めるため、何日も徹夜して100本以上のテープを見続けた。「楽しそうな仕事やな~」とからかう人もおるが、男と女のアソコが目に焼きついてほとほと困ったで(苦笑)。
下着泥棒にも何度も関わった。捜査で下着ドロを捕まえたら、押収した下着を被害者に確認してもらうが、犯人は盗品を頭から被ったり自分で履いたりするから、下着が汚れとることが多い。すると被害女性が恥ずかしがって、「これは自分のものではない」と答えて捜査がストップしてしまうんや。
そこでワシは、押収した大量の下着をコインランドリーで洗濯することにした。椅子に座って洗濯が終わるのを待っとると、カゴを抱えた中年女性がやって来て、グルグル回る大量の下着とワシの顔を一瞥するや否や、血相を変えて立ち去った。嫌な予感がした数分後、ウ~~ンとサイレン音が聞こえてパトカーが到着した。中年女性がワシを見て「下着ドロがおる」と通報したんや……。
別の下着泥棒事件で容疑者宅をガサ入れした時は、万年床がやたら華やかだった。「カラフルな布団やな~」と近づいてよく見ると、布団のように見えたのは、ブラジャーやパンティを縫い合わせたカバーだった。掛布団と敷布団、枕に至るまで、盗んだ下着のパッチワークに包まれとったんや!
さすがのワシも面食らって「お前これ、盗んだ下着やないかっ!!」と言うと、下着ドロはニヤリと笑ってこうつぶやいた。「秋山さん、これ寝心地が最高なんや」――。