年齢を重ねるほど「捨てる」「やめる」ことがプラスに働く事柄は多い。実家片づけ整理協会代表の渡部亜矢氏が言う。
「高齢で心身ともに健康に生きるためには、美しい生き方よりは、“きれいな生き方”ができるかがポイントになります。きれいとは色々な意味での清潔感のことで、モノや人間関係も含め自分の管理できる範囲内に収めることを意味します」
とはいえ、生きた年数だけ人付き合いは増えるし、長年暮らした住まいはモノで溢れる。それらの整理は考えただけで億劫になりがちだ。
しかし、次世代への継承の準備も兼ねて「整理」する必要がある。ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢氏は、「お金のプロ」である自身でさえ混乱したある経験から、「資産」「お金関連」の整理を推奨する。
「一昨年に父が亡くなり、父が病院に数十万円の供託金を預けていたことが、後になって分かりました。これは遺族が発見しなければ回収できなかったお金です。預貯金口座の数が多い場合は、遺族が見つけられないとお金は回収できず、探して見つけられたとしても、解約手続きが煩雑になります」
死後の手続きの負担を軽くするには、今のうちに“お金の整理”をすることが有効となる。その第一歩が銀行口座の取捨選択だ。
「預金保険制度で保護される1000万円以内で分けていき、年金の振込先、貯蓄用といった用途をはっきりさせて絞ると良いでしょう。また、クレジットカードを見直すことも必要です。年会費の高いカードは、歳を重ねて消費支出が減れば、特典を使い切るのは難しい。年会費無料のカードだけ残して断捨離するのも一つの選択肢です」(風呂内氏)
株や投資信託などへの「投資」も見直したほうがいい。
「株や投資信託など価格変動要素がある金融商品は、判断力が低下する前に減らし、やめることを検討したほうがいいでしょう。認知症などの病気になれば口座の管理が難しくなり、そのまま亡くなれば、遺族が困る可能性があります」(風呂内氏)