老後の生活設計を考えるうえで、「人間関係」の整理が重要だ。家庭によっては大きな課題となるのが親や義理の親だろう。
自宅から車で30分ほど離れた所に暮らす80代の母の介護をしてきた都内在住のAさん(62歳男性)はこう言う。
「妻と分担して週に5日は実家に通い、掃除に洗濯、入浴の手伝いから買い物や病院の付き添いまで、身の回りの世話をしてきました。母も『息子夫婦にしてもらうのは当然』と考えているフシがあり、こちらの都合はお構いなし。仕事中も電話で『テレビのリモコンが壊れた』『庭の植木が元気がないから見てほしい』などと用事を言いつけてきます。義理の親に振り回される妻は怒り、私たち夫婦の関係までギクシャクしていました」
精神的にも肉体的にも追い込まれたAさん夫妻が頼ったのは、地元の「地域包括支援センター」だった。同センターは、介護や医療など地域の高齢者の生活上の問題について、総合的に相談を受け付けてくれる窓口だ。
Aさんが事情を説明すると、センターの相談員から「訪問介護の利用」を提案されたという。要介護認定が必要となり、紹介されたケアマネジャーに頼んで申請代行をしてもらった結果、母は「要介護1」の認定を受けた。
「担当のケアマネさんは申請代行だけでなく、介護に関する各種手続きや介護プランの作成など、手厚くサポートしてくれました。現在、母は訪問介護の各種サービスを受けています。私たち夫婦の負担はかなり軽減されました。母も『面倒をかけている負い目』から解放され、表情が明るくなりました」(Aさん)
訪問介護のサポートとはどんなものか。介護評論家の佐藤恒伯氏が言う。
「公的介護保険の訪問介護では、食事や入浴、排泄介助などの『身体介護サービス』のほか、掃除やゴミ出し、洗濯、医療機関への付き添いなど『生活支援サービス』が受けられます。費用は身体介護が1時間4000円程度(1割負担で400円)、生活支援が1時間まで1500円程度が目安。利用限度額の超過分、適用外サービスは自費となりますが、家族にとっては介護の負担から解放されるメリットが大きい。親や義理の親と適度な距離を置くことで、良好な関係を保てるケースも少なくありません」
※週刊ポスト2022年6月24日号