今週の最大の注目は米6月消費者物価指数(CPI)だ。財・モノに関しては6月ISM製造業景気指数の入荷遅延や価格の項目の低下、ニューヨーク連銀のサプライチェーン圧力指数のピークアウト感から、インフレ沈静化の兆しが見られてきている。モノから移行してきた新たなインフレ主要因とされるサービス分野についてはまだインフレ沈静化の兆しが見られておらず、油断はならないが、6月CPIが予想並みにとどまれば、足元で改善してきている投資家心理が一段と改善し、相場の押し上げに寄与しそうだ。
そのほか、週末に集中する米中の6月鉱工業生産や小売売上高などの経済指標も注目される。中国では財政省が地方政府に対して今年下半期に1兆5000億元(約30兆円)相当の特別債発行を許可する方針と伝わるなど、景気浮揚策に関する報道が相次いでいる。ただ、一方で新型コロナ感染が再拡大しており、行動制限の再強化への懸念もくすぶっている。そのため、経済指標の結果次第で中国景況感の回復期待が強まるのか否かが左右され、注目度は高い。
日本時間で結果を反映するのは翌週となるが、景気後退懸念が加速している米国での週末に発表される経済指標も非常に注目される。上述した指標に加えて、5月、6月と連続で予想を下回ったニューヨーク連銀製造業景気指数の7月分は企業センチメントを図る指標として注目されよう。また、6月に過去最低を記録しているミシガン大学消費者マインド指数の7月分は消費者センチメントを占うと同時に、7月FOMCでの0.75ptの利上げに至った要因の一つでもある期待インフレ率の動向に注目だ。これらの指標結果を見極めたいとの思惑から、週末にかけては模様眺めムードが強まる可能性があろう。
また、週後半14日にはJPモルガン・チェースやモルガン・スタンレーの4-6月期決算が発表される。個人や企業を巡るセンチメントが悪化しているなか、経営陣の先行きに対するコメントはかなり注目される。特にJPモルガンの最高経営責任者(CEO)ジェイミー・ダイモン氏は6月1日に、経済の先行きについて「嵐が来るかもしれない」などと発言し、話題になった。今回の決算でのコメントもさることながら、貸倒引当金の積み立て額なども注目されよう。両社の決算結果は日本時間で週末15日に反映されるため、内容次第では週末に大きく様相が変わる可能性に留意したい。
国内では10日に参議院議員選挙の投開票が実施される。自民、公明の与党が改選過半数の議席を超えれば、この先3年間は国政選挙がないため、長期安定政権の誕生に繋がる。英国ではジョンソン首相が辞任を表明しており、政治の安定性は海外投資家から評価される可能性がある。また、参院選後には新たな補正予算の編成が期待されてもおり、政策期待が内需系銘柄の押し上げに寄与することも見込まれよう。
なお、今週は11日に5月機械受注、6月工作機械受注、12日に6月企業物価指数、米10年国債入札、13日に中国6月貿易収支、米6月CPI、米地区連銀経済報告(ベージュブック)、米6月財政収支、バイデン大統領・中東各国を歴訪(~16日)、14日に米6月生産者物価指数(PPI)、15日に中国4-6月期GDP、中国6月鉱工業生産、中国6月小売売上高、中国6月固定資産投資、米7月ニューヨーク連銀製造業景気指数、米7月ミシガン大学消費者マインド指数、米6月小売売上高、米6月鉱工業生産、G20財務相・中央銀行総裁会議(~16日)などが予定されている。