イラン「アザデガン油田」の悲劇、再び?
日本の国際資源開発には苦い経験がある。「日の丸油田」の象徴といわれたイランのアザデガン油田だ。
日本企業(国際石油開発)は埋蔵量が世界屈指とされるこの油田の採掘権の75%を獲得して開発を進めたが、2010年にイランの核開発疑惑に対する経済制裁を主導する米国から撤退を迫られ、権益の大半を手放さざるを得なかった。代わって権益を獲得したのは中国だ。資源エネルギー論が専門の岩間剛一・和光大学経済経営学部教授が語る。
「日本企業の海外での資源開発は、日本のエネルギー安全保障に貢献するという考え方で行なってきた歴史があります。しかし、今回のように相手国が国家接収する動きになると民間企業にできることは限られてくる。日本政府が積極的に関与して官民一体で交渉にあたる必要があるが、限界がみられる」
今回も日本政府の対応は鈍い。大統領令の一報を受けた岸田首相は、ロシア政府に抗議するどころか、「どのようなものを求められるのか注視しなければならない」と受け身の姿勢だ。
日本の外交力の弱さが商社マンたちの苦労を水の泡にしている。三井物産と三菱商事に今回の大統領令への対応について質問すると、
「日本政府や事業パートナーを含むステークホルダーとも今後の方針に関して協議して適切に対応していく所存です」(三井物産広報部報道室)
「サハリン・エナジー、パートナー、日本政府と連携し対応を協議中です」(三菱商事広報部)
と回答した。資源外交の命運を左右する商社マンたちの闘いは、ここからが正念場だ。
(了。第1回から読む)
※週刊ポスト2022年7月22日号