あらかじめ財産をスリムにしておくメリット
「相続税がかからなくなる金額まで、生前にお金を使っておくのも1つの手。余命宣告を受けた夫が、妻と2人の子供のために保険を解約して不動産を購入し、財産の評価額を下げることで、相続税がかからなくなったケースがあります」
ただし、購入した不動産や車も財産になるため、それらの評価額によっては、相続税対策にならない場合もある。円満相続税理士法人代表で『ぶっちゃけ相続』著者の橘慶太さんは、こう話す。
「遺産総額が基礎控除額を超えているなら、生命保険に加入するのも有効です。生命保険の保険金には“500万円×法定相続人の数”の非課税枠があるため、例えば相続人が3人なら、1500万円までは相続税がかからないようになります」
一方、仏具や仏像などが非課税になることから、換金性のある仏像や仏具を購入する手もあるが、これは特に注意が必要だ。
「“金の仏像”は、本当に毎日拝んでいるか、ほこりはたまっていないかなど、細かくチェックされます。もし“使っていない”と判断されれば課税対象になるため、あまりおすすめしません。それよりも、毎年110万円までの生前贈与の非課税枠を使う方がいい。生前贈与は相続人以外にもできるので、人によっては、かなりの額を贈与することができるでしょう」(橘さん)
あらかじめ財産をスリムにしておくことは、遺産管理や相続税の計算もラクにする。
「銀行口座は、元気なうちに1~2つほどまで減らしておいた方がいい。10年以上使われていない休眠口座のお金は民間のために国が使うようになるので、それを避けるためにも、財産はできるだけまとめておきましょう」(曽根さん)
もし、財産を把握しているときに不動産が出てきたら、せめて名義を確認しておくべきだ。不動産は古いほど売りにくく、分けるのも難しい。さらに、先代、先々代の名義のまま放置していると、法定相続人の数が増え、分割協議がどんどん面倒になる。
「2024年4月から、不動産の登記が義務化されます。取得を知った日から3年以内に登記または名義変更をしなければ、10万円の過料が科せられる。名義変更には、相続人全員の戸籍謄本などを集める必要があるため、早めの把握が必須です」(三原さん)
※女性セブン2022年7月21日号