世界的なエネルギー高、物価高が続くなか、日本では電力の安定供給に不安が出始めた。需給逼迫を前に、資源エネルギー庁は9月30日まで「省エネ・節電」を呼びかけている。加えて、電気料金の値上がりも家計にとっては大きな問題だ。在宅勤務が普及したことで、「毎月の電気代が跳ね上がった」という家庭も多いのではないだろうか。とはいえ、電気代節約への道は一筋縄ではいかない。特に家族の間で節電意識に差がある場合、そこから家族関係にヒビが入ってしまうケースもあるようだ。節電をめぐり夫婦間で対立が起きたという30代主婦に、フリーライターの吉田みく氏が話を聞いた。
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都内在住のパート主婦マリさん(仮名、39歳)は、夫と12歳の子供の3人暮らし。ここ最近は、家族に「節電」を呼びかけることに疲れを感じているという。
「6月下旬の梅雨明け以降、ニュースで電力不足を知り、節電を意識した生活を送るようになりました。使っていない部屋の電気を消す、エアコンの温度設定は下げすぎないなどを家族にも伝えましたが、子供はあちこちの電気をつけっぱなしにするわ、夫も全然協力してくれないわ……。私だけが節電している状況にイライラしてきました」(マリさん、以下同)
マリさんが節電に励むのは、電力不足だけが理由ではない。最近、毎月の電気料金が家計を圧迫していることも影響していた。その大きな理由は、コロナ禍で始まった夫のリモートワークだった。
「コロナをきっかけに、夫は原則リモートワークとなりました。余っている部屋なんてありませんので、リビングに簡易的な仕切りを使ってワークスペースを作ったんです。仕方がないことではありますが、夏には朝から晩まで18畳のリビングはクーラーかけっぱなし、電気もつけっぱなしの状態。以前と比べると1万円近く上がりました。会社からはリモートワーク手当として2000円支給されているそうですが、夫のタバコ代に消えています。ないよりかマシですが、2000円じゃ全然賄いきれません……」
電気代が節約できる省エネエアコンの購入も検討したそうだが、今はまとまった出費は厳しいと判断し断念。せめてもの節約を、と就寝時に寝室のエアコンを切ることも試したが、寝苦しくて安眠できなかったという。「あれこれ考えて動いてみても、どれひとついい結果にならないんです」と、マリさんは嘆いていた。
毎日節電に腐心しているマリさんだったが、家族の意識が変わらないこと、家計が火の車になっていることでストレスが溜まり爆発。夫に文句を言ったという。
「『リモートワークをやめてほしい!』『もっと節約意識を持ってほしい!』と、強く非難しました。夫は黙ったままで反論しませんでした。きっと夫も悪いと思っていたのでしょう。この話し合いを境に、夫は近所の図書館に出かけて、そこで仕事するようになったんです。最初は電気代が浮いてラッキーだと思っていましたが、話はそれで済みませんでした」