省庁や自治体の中には、法令違反業者・違反者の名前をネットに公開しているところもある。こういった行為は、人権侵害やプライバシーの侵害にあたらないのだろうか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
京都府内の自治体では、条例違反者の氏名や事業者名を、それぞれのホームページで公表しています。条例違反を犯した人が悪いのは当然ですけど、ネット上に氏名を公表するのは、やり過ぎだと思います。これでは単なるいじめで、人権侵害にもなりかねません。それでも自治体のやり方は、正しいのでしょうか。
【回答】
条例違反だけではなく、新型コロナでの緊急事態宣言時も、休業要請に従わなかったパチンコ店の店名公表が話題になりました。ただ、一定の法令違反者氏名の公表は行政処分の公告として、これまで普通に行なわれ、インターネットでは違反者の氏名が公表されています。
例えば、国交省のホームページのネガティブ情報を検索すると、所管法令に違反して処分された業者の名前が一覧でき、さらに違反行為や処分内容を知ることができます。
こうした氏名を含む処分の公表は、国民に広く違反業者を知らせ、被害に遭わないようにする注意喚起の目的の他に、違反者の名前を世間に知らせて懲らしめる制裁目的、制裁を通じて法の目的や実効性を確保する狙いがあると考えられています。
注意喚起の目的であれば、違反行為を繰り返し、今後もその虞のある人物や業者の氏名を公表することは、被害の拡大を防ぐためにも、やむを得ないことだと思います。また、営業停止や営業許可の取消処分を受けた者を公表して国民が営業できない業者と取引しないよう警告するのも、意味のあることです。