しかし、制裁的効果を狙った氏名公表でも見方によっては、さらし者にして恥をかかせたり、公表情報に接した人々の同調を得て懲らしめるといった面も考えられます。特に、インターネット環境で違反者の氏名データが長期間にわたって流通し、容易に検索できてしまうと、営業停止などの行政処分や罰金などの罰則以上の不利益を与える可能性さえあります。
このような観点から、危惧を持つ向きもあり、私も同感です。そこで氏名公表措置は、法令上の根拠が必要なことはもちろんですが、当該違反者に弁明する機会を保証した上で判断されるべきであり、一定期間が経過すれば、削除されるような工夫が必要でしょう。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2022年7月29日号