知らぬ間に自分の名前で葬儀に花輪が出されていた──。それが絶縁中の親族による行為だった場合、花輪の代金を支払う必要はあるのか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
先日、祖母が亡くなりましたが、実家とは絶縁しており、親戚づきあいもしていなかったので、祖母の葬儀には欠席しました。その後、葬儀会社から連絡があり、「花輪代を支払ってほしい」と言われました。私は祖母の葬儀に花輪を出していませんが、親族の誰かが私の名前で勝手に出したようです。
葬儀会社には、「私が出したのではないから支払わない」と伝えましたが、しつこく連絡してきます。自分が出していない花輪代を支払う義務があるのでしょうか。(48才・会社員女性)
【回答】
葬儀会社は、注文を受けて花輪を出します。親戚のどなたかがあなたの名前で出すことを注文したのでしょう。
葬儀会社があなたの代理人から注文を受けたとしても、あなたに請求するためには注文者があなたに代わって注文する権限を持っていたことを証明する必要があります。
仮に欠席する代わりに義理を欠くことがないように善処してほしいなどと喪主にお願いしていれば、実家の地方では孫が花輪を出すのが慣行だと、代理権付与が認められる可能性もありますが、親戚づきあいがなかったあなたがそうした依頼をするわけはありません。
花輪の注文者にあなたに代わって注文する代理権がなかった以上、葬儀会社への注文の効力はあなたには及びません。注文者が無権代理人として葬儀会社に対し代金の支払い義務を負う関係になります。葬儀会社がしつこく言ってきても相手にする必要はありません。
しかし注文者は、祖母の葬儀に参列しなかったあなたの面目を守るためによかれと思って注文したかもしれず、あなたに花輪代金の支払いを要求してくるかもしれません。