民法では、「義務がないのに他人のために事務を行うこと」を事務管理といい、事務管理にかかった費用を請求したり、事務管理で負担した債務がその他人のために有益なものであればその支払いを要求できるとしているからです。
この事務管理は、本来、他人の生活関係への干渉ですが、「社会生活における相互扶助の下、他人の合理的な利益を図ろうとする行為」であることから適法な行為とし、費用等の合理的な精算をさせる制度です。
あなたの花輪の手配は、注文者にとって「他人の事務」であり、代わって注文する義務はないので、義務なく他人の事務の管理をしたといえます。
しかし、事務管理は本人の意思や利益に反していることが明らかである場合にはできません。祖母の葬儀に花輪を出す手配をすることが意思に反していることが明らかかどうかはここでは判断できませんが、昨今の簡素な葬儀が主流になっている背景の下では、絶縁している孫にとってある程度の出費を伴う花輪の手配は、不利益になる事務といえるでしょう。注文者は事前に確認すべきであったと思います。そこで注文者から請求があっても応じなくてもよいと思います。しかし、注文者の善意を無視することになり、親戚との縁切りは確定的になるかもしれません。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2022年8月4日号