ただ、多くの場合、建物賃貸借には保証人がついており、大家はまず、保証人に請求、支払った保証人が相続人に求償するはずだと思います。ご質問では、保証人がいなかったのかもしれません。
しかし、心配には及びません。あなたが20年以上も音信のない、お父さんにプラス資産がないと思うのなら、家庭裁判所に相続放棄の申述をすることで、相続人ではなかったことになり、相続債務の支払いを免れます。
ただし、この相続放棄の申述は、相続が開始したことを知ってから、3か月以内に行なうことが必要となります。また、相続財産を処分などすると、相続を承認したものとみなされ、放棄できなくなるので、注意してください。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2022年8月5・12日号