「いいね!」で個人をプロファイリング
海外でもっとも有名なプライバシー侵害事件の1つが「ケンブリッジ・アナリティカ事件」だ。
2016年11月8日に行われたアメリカ大統領選挙は、民主党のヒラリー・クリントン候補と、共和党のドナルド・トランプ候補が争った。下馬評ではクリントン氏有利だったが、ご存じの通り、トランプ氏が逆転勝ちした。
この裏では、英国企業ケンブリッジ・アナリティカ社(以下CA社)が、Facebookユーザーのビッグデータをもとにした膨大なターゲティング広告を打っていたという。Facebookから手に入れた個人情報を使い、有権者の動向を分析。動向別にいくつかのグループに分け、それぞれの層にマッチしたキャンペーンを展開することで、着実に共和党支持者を増やしていったと考えられている。桜美林大学リベラルアーツ学群教授の平和博さんが言う。
「CA社は約8700万人分のFacebookの個人情報を不正取得し、トランプ陣営の選挙戦で使ったのではないかと指摘されています。CA社が参考にした研究によると、そのFacebookユーザーが何に“いいね!”をしたかというデータだけで、白人か黒人かは95%、ジェンダーは93%、民主党支持か共和党支持かは85%、ゲイは88%、レズビアンは75%の確率で推測できるといいます。ユーザーの投稿した文章などではなく、たった1タップの“いいね!”でも、集まれば簡単に個人をプロファイリングできるのです」
CA社は、イギリスのEU離脱の是非を問う国民投票にも関与していたうえ、ロシアとのつながりも囁かれている。トランプ氏当選にCA社がどれだけ“役立った”のかは不明だ。だが、少なくとも、ビッグデータを政治に利用する動きがあることは、まぎれもない事実なのだ。