家族にも隠していた“秘密”が暴かれた
データを収集されるのは、SNSばかりではない。2012年のニューヨーク・タイムズの報道によると、アメリカの大手スーパーマーケットのターゲット社が顧客の購買履歴を分析し、クーポンを送ったことで、ある事件が起きた。
「ターゲット社は、購買履歴から『妊娠予測スコア』を算出するシステムを開発し、出産予定の確率が高い顧客に、販促の一環としてベビー用品のクーポンを送りました。ところが、クーポンを受け取った顧客の1人に、女子高校生がいたのです。
“娘に妊娠しろと言うのか”と父親が激怒し、スーパーに怒鳴り込む騒動になりました。しかし実は、その女子高校生は本当に妊娠していて、父親が知らないだけだった。家族にも隠していた“秘密”を、ビッグデータが暴いてしまったのです」(平さん)
もし、ビッグデータに頼らず、店頭で妊娠中の女性を相手にクーポンを手渡ししていれば、このような事態にはならなかったはずだ。
高校生の妊娠が何を意味するか、その女の子と家族は、どんな状況にあるか──システムは想像力を持たず、「正しさ」の判断もできないのだ。
文/角山祥道 取材/進藤大郎、土屋秀太郎、平田淳
※女性セブン2022年8月11日号