1980年以来で最も円が弱い
加藤氏は、「購買力平価」と呼ばれる「同一の財・サービスをある国で買う場合の交換レート」(以下グラフ)を参照しながら、円が過去40年で最も弱い状態にあることを説明していく。
「IMF(国際通貨基金)の推計では、今年のドル・円の購買力平価は91.15円となっています。つまり、米国で1ドルで買えるものは、日本では91.15円の値段になっているということ。それに対し、現在の為替レートは1ドル=136円程度です。円がおよそ50%も割安になっているのです」
わかりやすく言えば、日本人が米国に旅行に行くと、為替レートが適正なら100円で買える商品やサービスが、今は150円程度出さないといけない状況というわけだ。海外旅行に行った際に、先進国は宿泊費や食費などの物価水準が高く、途上国では低いと感じたことがある人は少なくないだろう。米国と日本の間で、そうした物価水準の差がどんどん広がっているわけだ。
「最近の為替レートが1ドル=136円と言っても、1985年のプラザ合意以前のレートは1ドル=200円を超えて円安だったので、“昔のほうが円は弱く、今のほうがまだ強い”と思うかもしれませんが、為替レートと購買力平価のギャップを見ると、1980年以来で今は最も円が弱い。
1982年には1ドル=277円だった時代がありますが、その時の購買力平価との比較では日本円が28%の割安に過ぎませんでした。当時、米国を旅した人たちよりも、今、旅行に行く人のほうが“海外は物価が高い”と思う感覚が強くなるわけです」
1960年代から70年代にかけての高度経済成長を経て、日本は先進国の仲間入りをしたはずだが、いつの間にか、途上国の水準へと巻き戻しが進んでいるのだろうか。