引っかかりそうな人が発しがちな2つのワード
続いて、「怪しい儲け話に引っかかりそうな人」が発しがちな言葉を2つ紹介します。
・種銭
相談客などがこの言葉を発したら、筆者は瞬時に冷静になります。投資とギャンブルが一緒くたになっていて、一攫千金に期待しているのが見え見えだからです。「必死で作った数十万円を元手にお金を増やして楽をしたい」「お金がないので借金をして投資をしたい」……そんな希望とセットになって飛び出す言葉が「種銭」です。
・不労所得
投資で不労所得を得るには、それなりの投資元本が必要ですし、それまでの地道な仕事や節約、真っ当な投資の勉強など、努力の上に築き上げた結果が不労所得だと考えるべきです。最近は経済的に自立して早期リタイアする「FIRE」という言葉もよく聞くようになりましたが、私の知っているFIRE達成者はその後も勉強熱心ですし、精力的に活動している人がほとんどです。FIREと言いながらも、何もしないで不労所得を得ているわけではなく、職を変えて収入を得ている印象です。仕事がつらいという理由で思い浮かんだ「不労所得」という言葉は少々危険かもしれません。
TKO木本さんがどんな投資トラブルに遭ったのか、その詳細まではわかりませんが、実際に儲かっている時もあったのだと思います。でも、儲かり続けること、換金と納税までに至ること、さらに他人の資産をも増やして換金と納税まで面倒をみるなんて、難し過ぎる挑戦だったと思います。
今回の報道を通じ、一般生活者の私たちは、自分や家族や大事な人たちをお金のトラブルから守ることを、第一に考えていただければと幸いです。
【プロフィール】
川部紀子(かわべ・のりこ)/FP・社労士事務所「川部商店」代表。1973年北海道占冠村生まれ。生命保険会社で勤務したのち30歳で起業。大学の非常勤講師として講義を担当するほか、個別相談、セミナー・講演講師、各種執筆、テレビ・ラジオへの出演も多数。近著に『得する会社員 損する会社員 手取りを活かすお金の超基本』(中央公論新社)がある。