任意後見人が「財産の管理保全」を目的にしているのに対し、家族信託はそれ以外にも、財産を処分したり、賃貸物件として運用して利益を得ることもできる。ベリーベスト法律事務所の弁護士・的場理依さんも、こうアドバイスする。
「投資用マンションなどの収益物件を持っている場合は、家族信託が向いています。例えば“母が持っているマンションの管理は受託者の子供に任せて、そこから得られる収益を母親の生活費に回し、母が亡くなったら受益権を子供が相続する”など、本人が元気なうちから、先々までの管理を任せることも可能です」(的場さん・以下同)
また、家族信託と併せて、本人が判断能力を失った場合のための任意後見契約を結ぶこともできる。
通常、家族信託の場合は、受託者への報酬がなく、無償で済むことが多いのもメリットだと言える。
「ただし、受託者は、良識を持って信託財産を管理する責任のほか、帳簿の作成、報告等の義務を負います。また、不動産登記の手続きなどの諸費用もゼロではありません。後見人でも信託でも、コストは財産の規模によって変わるため、費用ではなく、あくまでも“財産をどう管理したいか”で選んでほしい」
そのほか、判断能力は失われていなくても自分で管理するのが難しければ、財産管理の代理を任せる「財産管理委任契約」もある。
これは当事者同士の合意で締結するため、公正証書の作成は法律上必須ではない。ただし、適切な管理がされているかどうかは、自分で監督する必要がある。プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんが言う。
「家族や親族などの信頼できる人に、財産管理委任契約の受任者と任意後見契約の後見人をお願いして、かつ、弁護士などの専門家に依頼しておけば、もっとも安心度が高いでしょう。ただし、金融機関によっては、財産管理委任契約による手続きが窓口で認められない場合もあるため、注意が必要です」(三原さん)
※女性セブン2022年8月18・25日号