実際に暮らしてみると、こんなに暮らしやすいところはなかった。ちょっと足を延ばせば山があり、川があり、海があり、自然豊かな環境がある。町中では生活に必要なものがそろい、日曜市に行けば旬の食材や、地元の人が丁寧に作ったものが並んでいる。
それに、最新のファッションも手に入り、歴史も最先端の文化もある。
「高知県にいると、“真心”をものすごく感じます。地元の人は、それが当たり前だと思っていますが、東京にいて、芸能界で生きてきた私には、その素晴らしさが、より実感できているのかもしれません。どこに行っても気軽に声をかけられるし、どんなときでも周りの人が優しく対応をしてくれます。それは、私が映画監督だからでなく、共に生きているから、『高知家』の家族だからと感じるのです」
市役所で手続きをする際に書類がそろっていなかったときも、「これが足らんから、今日は無理だね」と言いながら、ほかの部分も確認して不足分を教えてくれ、わからないことがないかと、親身に相談にも乗ってくれる。毎日がそんな思いやりの連続だという。
「街で顔見知りと出くわせば、すぐに互いの近況報告が始まるため、周囲に情報はダダ洩れです(笑い)。だから、干渉しないクールな暮らしを好む人は、煩わしく思うかもしれません。どこでも同じだとは思いますが、暮らすには、まずお互い心を開き合い、助け合い、分かち合いながら生活していくのが大切かな。みんな家族だなって感じます」
(後編へつづく)
【プロフィール】
安藤桃子/映画監督。1982年、東京都生まれ。2010年映画『カケラ』で監督・脚本デビュー。ミニシアター【キネマM】代表。ラジオ番組「ひらけチャクラ!」(FM高知)のパーソナリティーも務める。著書『ぜんぶ 愛』(集英社インターナショナル)発売中。
取材・文/山下和恵 写真提供/安藤桃子
※女性セブン2022年8月18・25日号