相続対策を考えるなら「よくトラブルになるパターン」を知っておくとよい。自分の家族が該当するなら、先んじて対策が取れるからだ。では、トラブルになりやすいのはどんなパターンなのか。
親が財テクに血道を上げていると厄介になることがある。遺産分割協議後に、ネット証券口座に残されたデジタル資産など新たな遺産が見つかれば、相続税の修正申告をしなければならなくなる場合があるからだ。『トラブルの芽を摘む相続対策』(近代セールス社)などの著書がある、吉澤相続事務所代表の吉澤諭氏が語る。
「将来的にそうしたトラブルが増える懸念はあります。取引している金融機関から年間取引報告書などが送られてくれば帰省の際に郵便物で確認できるが、ネット証券などの場合、何も送られてこないケースがあるので注意が必要です。親に財産目録を作ってもらうのがベストです」
親にもしかしたら借金が…
最大の相続トラブルが「親の借金」だ。“相続放棄”を選べば、プラスの財産を相続できない代わりに借金を引き継がなくて済む。ただし、死後3か月以内に手続きをする必要があり、何もしないと放棄できなくなる。
「厄介なのは、自分の借金を隠したがる人もいて、親が亡くなる前に把握するのが難しいことです」(吉澤氏)
親が過去に借金トラブルに巻き込まれたことがある場合などは、一層の注意が必要になる。
「さらに気づきにくいのは連帯保証人になっている場合。親戚の連帯保証人になっていた親が亡くなり、相続の手続きが終わった後に親戚が夜逃げ。相続人に消費者金融から2000万円の請求が来た実例もあります」(吉澤氏)
対策は難しいが、考えられることはある。
「生前に親の通帳を確認する。不動産の登記簿を見て信用保証などの抵当がついていないかを確認する。もしそうした徴候があれば、相続放棄を視野に入れておくとよいでしょう」(吉澤氏)
少しでも該当しそうなケースがあるなら、この夏の帰省時から対策を始めるとよい。
※週刊ポスト2022年8月19・26日号