今春以降急速に進んだ円安が、日本経済に深刻なダメージを与え続けている。7月中旬には為替相場が一時1ドル139円台に突入し、24年ぶりとなる円安を記録した。
今後も円安が続き、値上げが続くとすれば、どんな事態が起こるのか。経済アナリストの森永卓郎氏はこう言う。
「急激な金利引き上げの結果、アメリカの景気が失速に向かい、為替相場はどこかで円高に振れていくと見ています。ただ、それまでの間に、もし1ドル130円から200円という円安状態に進めば、消費者物価は今より約8%の上昇になります。これは産業関連表の価格均衡分析という手法で試算でき、商品別で詳しく見ると、例えば都市ガスが約26%、ガソリンが約24%、衣服・身の回り品が約24%、家電が約16%、食肉が約13%の価格上昇率となります」
すでに、東京電力と中部電力管内では9月からの電気料金のさらなる値上げが発表されている。東短リサーチのチーフエコノミスト・加藤出氏が言う。
「円安の長期化はエネルギー価格の高騰に拍車をかけています。原油相場は中国経済への不安などで6月のピーク時より下がっているものの、ウクライナ情勢はまだ先行き不透明です。下げ渋りや再上昇の恐れはあります。特に灯油など冬の燃料費がかさむ寒冷地では、最も電気代が高くなる冬場に向け、エネルギー価格の高止まりと電気料金の値上げによる大打撃が予想されます」
続けて加藤氏は、「現在の円安は、今後じわじわと生活に影響していく」と見る。
「食品主要105社を対象にした帝国データバンクの最新調査(7月末時点)によれば、『年初から値上げ済み』の品目数が増えた一方、『今後値上げ予定』の品目も急増しています。円安の長期化で、すでに値上げした食品の再値上げや、値上げ予定のなかった食品の値上げも増えている。
昨年来、流通大手のイオンや西友はプライベートブランド商品の『価格凍結』を行なってきましたが、さすがに7月から一部商品の値上げが始まっています。彼らが耐えきれなくなって値上げがより増えると、他のメーカーも急速に追随する可能性があります。現在の円安の影響の特徴は、じわじわと生活面に現われるところ。気付いたら1年前に比べてとんでもない負担を強いられていたとなりかねず、長期的に家計に影響を与えています」